人体が持つ体内時計と肥満について

私たち朝目覚め、夜眠ります。
この周期的なリズムは、単に生活習慣というものだけではなく
私たち人類が哺乳類から進化してきた過程から、遺伝子にその約24時間のリズムが刻み込まれているのです。
今回は、そんな人類の持つ体内時計について
以下の論文から紐解いていこうと思います。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/69/5/69_401/_article/-char/ja/

私たち人類の身体には規則正しい生活を送るために約24時間の周期的なリズムを持っています。
この、周期的なリズムを

概日リズム

と呼びます。

この概日リズムは体内時計によって生み出され
体内時計は栄養素の消化・吸収と相互関係にある事が知られています。

哺乳類が持つ体内時計のモデル

体内時計は脳の視床下部視交叉上核(suprachiasmatic nucleus: SCN)に存在する。
このSCNは外界からの明暗刺激(つまり光の刺激)によって働き、太陽光を目に受ける事で体内時計をリセットしている。
よく「朝起きたらまずカーテンを開けて日光を取り込みましょう!やる気アップ!!」と
キラキラOL応援系メディアが書いている情報は意外と理に適っているのだ。

それはさておき、中枢時計以外にも肝臓や腎臓の末梢臓器にも時計があり、これは中枢時計と区別して「末梢時計」と呼ばれている。

この末梢時計は、中枢時計からの情報以外に食事によっての影響を大きく受ける事がわかっている。

末梢時計の食事による制御

つまり、食事のタイミングが末梢時計に大きく影響を及ぼすのだ。

本来寝ているハズの時間にのみ餌を与えたマウスの実験では

  • 末梢時計のリズムがズレた
  • 中枢時計のリズムはズレなかった

という結果になっており、
中枢時計と末梢時計がズレる事により、脳で混乱を引き起こしている可能性が示唆された。

その他にもこのように食事時間帯を制限したマウスによる実験で
同じカロリーの食事を

  • 自由に食べる
  • 朝食のみ
  • 夕食のみ
  • 朝夕食の2食を1:3で分けた
  • 朝夕食の2食を3:1で分けた

5つの群に分けて実験を行うと

8週間にわたる食餌時間制限による体重変化の観察

自由>夕食>朝食>2食(1:3)>2食(3:1)の順に
体重の増加を抑制できることが明らかになった。

つまり、「朝食はしっかり食べろ」「夜食をするな」という事がわかった。
当たり前のように聞こえるこの2つは、実際に実験としても明らかになっている。

さらに、この朝食をしっかり食べるという事は
末梢時計と中枢時計の時刻合わせを行うきっかけにもなり
朝から脳がしっかり働き、パフォーマンスを上げ、夜しっかり眠たくなる
というスーパー正のサイクルが生まれるのである。

現代社会では仕事に追われ、時間のない朝の食事はスキップされがちだが、
太りにくい習慣を身に付ける事や、規則正しい生活を送るうえでこの上なく重要な事だとわかる。